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日本画家の岡本明久さんインタビュー

財団:

今回は、日本画家の岡本明久さんをご紹介します。

画家の岡本明久さん

≪岡本明久さん プロフィール≫
1951(昭和26)年
富山県砺波市に生まれる。
東京藝術大学 美術学部日本画科に学ぶ。
大山忠作に師事。日展、日春展に出品。
2006(平成18)年
第38回日展第1科で特選受賞。
現在、日展会友、市川市美術会理事。市川市在住。

 
財団: 岡本明久さんが、日本画を描くようになったきっかけを教えていただけますか?
 
岡本:

今は亡き父親が絵描きでした。川合玉堂先生に師事してからのスタートでしたので、終生師風の側面があったようです。
学校から帰るといつも描いている父の背中を見て育ちました。その仕事の深淵に惹かれてしまい、何のためらいもなく、この世界に入りました。

散歩
「散歩」
   
財団:子供の頃から、日本画に触れる機会が多かったのですね。
   
岡本:   はい。小学生の頃、父に連れられて観た日展での松岡映丘、結城素明、徳岡神泉、福田平八郎、山口蓬春の作品の迫真力があまりに凄くて、いまだに鮮明に、脳裏に焼きついています。過去の先輩たちの仕事がどれだけ多くの子供の心を魅了するか、ということだと思います。
人の眼を通して生み出された絵画は、機械のそれとは全く違った、まばゆくエネルギーに満たされたものでした。まさに「“人間”って凄い」と思わざるを得ない一瞬です。
 
財団:日本画のどのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか?
   
岡本:   日本画の素材では、四季を彩る花鳥や穏やかな自然、荒ぶる自然などの表現に憧れ、魅力を感じました。また、素材とする岩絵具の奥ゆかしく透明感のある煌きがそれにふさわしく思えました。
私は修学生の立場から、やはり勉学の為にもすべての絵画の基本は人物、寸部の狂いも許されない客観的表現に救いを求めました。日々精進研究の立場から、迷ったら人物に戻ることで、何か重要なものが、得るものがあるように思われました。
   
財団: 人物画を多く手がけていらっしゃいますが、テーマにされていることを教えて下さい。
   
岡本:   20才代では、シュールリアリズムや新感覚派、ダブルイメージの手法に興味をもって描きました。30才代では、中国で発掘ブームがあり、時事エポックという面と日本文明のルーツという面でも、毎年のように出かけて取材していました。40才代では、雅楽や古典衣装の装束をテーマにしました。
そして、50才代となった今、現代の人物像に取り組もうとしています。いろいろ試みてはいますが、すべては素描の線に始まって造形の線に終わるのが日本画だと思っています。
はたちの日
「はたちの日」
 
財団: 作品が完成するまでに、どのくらいの期間がかかるのですか?
   
岡本:

描く対象の内容・大きさ・テーマ・構図・色彩等まちまちではっきり言い切れないものがありますが、技術的な目安として1号につき1日です。およそ10号で10日、30号なら1ヶ月、50号で1ヶ月半ですね。100号とか150号ですと2〜3ヶ月はみておく必要があります。また、大作になりますと、取材とスケッチだけでなく、小下図、中下図、大下図が必要となります。
年間の目標としては、500号くらいになれば…という理想があります。春と秋の展覧会で、200号。残り300号を10号等の小品によるグループ展や個展に向けられれば、と思っています。

   
財団: 岡本さんにとって、日本画、さらには、文化芸術とは?
   
岡本:  描くという行為は、自然界や小さな宇宙にまでも繋がる入口です。それは人間が謙虚に森羅万象宇宙にまで自分の眼で、心で、手で、深く探求することに導かれています。
錯綜する現代情報化社会にあって、人は心に安らぎを失い、善悪正否のバランスを失った冷たい機械が支配する社会に陥ってしまうのでは、という危機感を拭い去れません。
自然への博愛、そして何よりも素直に美しいものに心ときめき、感動する優しい心、文化芸術の果たす役割はこれまで以上に極めて重要に思われます。
 
財団: 文化芸術の大切さは、大人だけでなく、子供にもいえることでしょうね。岡本さん自身、子供の頃から文化芸術に親しまれてきたそうですが…。
   
岡本:  昨今、学校から美術の授業がどんどん少なくなりつつあるという悲しい現実があります。欧米では大切にされている教科なのですが…。いつの頃からか、自然と子供の心が荒れて、学力低下も著しいとのことです。張りつめた糸が切れやすいという例えもありますが、絵を描くことで心に自主制を取り戻し、心が休まったり癒されたり、様々な生命に感謝する気持ちも芽生えるのではないか、と私は考えています。
古来、文化芸術を軽んじた国はたちどころに滅ぶ運命をたどっています。より広くより深く感受性を身につけることは国際化にとっても重要と思われます。
お互いの文化を認め合い、深め合ってこそ対等の交流が出来、健全な国際人となれるのだと思い ます。
 
財団: ところで、市川市芳澤ガーデンギャラリーでは、4月28日(土)から6月3日(日)まで、「中山忠彦をめぐる4人の新鋭作家」が開催中です。
岡本さんも出品されていますが、展覧会によせて、ひとことお願いします。
   
岡本:  洋画壇で第一人者であり、日展重鎮の中山忠彦先生からのお話があり、大変光栄に思い、ご厚意に甘え、ご同席させていただくこととなりました。
芳澤ガーデンギャラリーの広々とした庭を見ながら、ゆったりと絵画を観ていただける空間で、選ばれましたことは、とても大きな歓びです。
 
財団: では、最後に今後の抱負等あれば、よろしくお願いします。
   
岡本:  作家にとって作品は、一期一会のその時にしか描けないものと思っています。頭の中でこう描こうと思っていましても、うまくゆくものではありませんが、良い出会いというものはあります。私の場合、5年間周期で1回、大きな方向転換を試みています。つまり主題とか技法とかを一つに決めたら、5年間はとりあえず掘り下げてみようということです。
そうしているうちに、次の目標のようなものが少しずつ形になってくるように思えるのです。一生は短いですから、道標は成長の過程にふさわしい形で進められ、出会えれば、と思っています。
 
財団: 本日は長い時間にわたり、ありがとうございました。
   
岡本:  ありがとうございました。
 
〈展覧会のお知らせ〉
中山忠彦をめぐる4人の新鋭作家 ―市川ゆかりの作家がおりなす美の響―
  平成19年4月28日(土)〜6月3日(日) 
9:30〜16:30(入館は16:00まで) 月曜休館(祝日の場合は翌日休館)
入館料:一般300円、シルバー(65歳以上)240円、ローズメンバーズ200円、中学生以下無料
会場・問合せ先:市川市芳澤ガーデンギャラリー
千葉県市川市真間5-1-18 TEL047−374−7687
展示内容及び出品者:日本画《岡本明久》、洋画《中山忠彦(本展覧会監修者)、中村晃彩》、彫刻《陳漢》、書《井上清雅》 【敬称略・順不同】


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